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東大、従来比100万倍高速なレーザー加工技術 次世代半導体に活用

ガラス基板へ多量の貫通穴を超高速加工(穴間隔100μm)

東京大学とAGCによる研究グループは、レーザー加工を従来比の100万倍高速化する技術を開発した。ピコ秒(10のマイナス12乗秒)の一瞬だけ材料の物性を変化させることで、加工効率を劇的に向上させるもので、次世代半導体開発への活用が期待される。

Intelが2023年に次世代半導体へガラス基板を活用すると表明して以来、ガラス基板の微細加工技術開発が世界中で進められている。しかし、ガラス自体の脆さから加工は困難で、化学薬品によって形状を形成するエッチングを活用した加工法も存在するが、加工時間の長さや環境負荷が課題となっている。

エッチングを使わないレーザー加工も注目されているが、従来手法では半導体用途で要求される微細な穴形状(深さ1mm以上、直径100μm以下の貫通穴)を1つ作るために約10秒を要していた。しかし、実用上は1秒間に1,000個以上の微細穴を形成することが必要で、ブレイクスルーとなる技術が求められていた。

今回開発した技術は、レーザーの時間波形と空間波形を制御することにより、加工速度を100万倍高速化することに成功したもの。ピコ秒という極短時間のみ物性を劇的に変化させることが可能で、超高速・超精密な加工を実現する。これにより、加工時間20µs(従来比100万倍速)で、深さ1mm、直径3μmの超高アスペクト比の穴あけ加工を実現。従来のレーザー加工で問題となっていた、加工時のクラック(亀裂)や、穴形状のゆがみもなく、極めて精密な加工を実現した。

従来比100万倍速の超高速加工法
厚さ1mmのガラス基板に形成された貫通穴

素材はサファイア、炭素ケイ素、ダイヤモンドなど、さまざまな素材に適用が可能なため、半導体産業だけでなく、宇宙分野、医療工学、物理工学など幅広い分野への波及効果も期待できる。

また、従来のフェムト秒レーザーよりも4桁低い出力のレーザーによって実現するため、加工装置の低価格化や消費エネルギーの大幅な削減も可能になる。

こうしたことから、半導体産業の飛躍的な進展に貢献するとともに、材料特性を瞬間的に変化させるという新たな概念を提示することで、製造業界にパラダイムシフトをもたらすことが期待されるという。