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10年後の渋谷の全貌、スクランブルスクエア完成・銀座線の上に歩行者デッキ

宮益坂下交差点から見た渋谷駅周辺の様子。手前の渋谷スクランブルスクエア(東棟)は2019年に開業した

東急は、渋谷スクランブルスクエア第II期の着工、宮益坂地区再開発組合設立の認可など、渋谷再開発に複数の進捗があったことから、2034年度までに完成する計画で進められている「渋谷駅街区計画の最終章」について発表会を実施した。

東急は、4月に「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」市街地再開発組合設立について東京都知事から認可を受けたこと、5月に渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)の工事に着工したことを発表しているほか、3月に東急百貨店本店跡地再開発「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」の着工と「Bunkamuraザ・ミュージアム」拡大移転を発表している。

渋⾕スクランブルスクエア スクランブル交差点からの視点(提供:渋谷駅街区共同ビル事業者)

今後の渋谷駅周辺、および渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクトの竣工等の予定は以下の通り。


    2029年度:渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト竣工
    2030年度:渋谷駅・歩行者ネットワーク概成
    2031年度:渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)竣工
    2031年度:宮益坂地区再開発竣工
    2034年度:歩行者ネットワークのアーバンコアおよびハチ公広場等完成
渋谷スクランブルスクエアを中心とした完成後の駅周辺の模型。最も高い東棟から、右へ順に中央棟、西棟

1927年の東横線渋谷駅誕生から約100年の歴史

発表会では、1927年の東横線渋谷駅誕生以降の、これまでの100年の歴史を紹介。東横百貨店(東急百貨店東横店)を皮切りに、東急文化会館、東急百貨店本店など、生活、文化を支える場、街のにぎわいとエンターテインメントを盛り立てる施設が開発された。

1970年代後半からは、ファッション、音楽、演劇、アートといったカルチャー発信地としての渋谷に呼応し、渋谷109やBunkamuraが開業。その後、ビジネス立地としてのニーズに応える拠点として、QFRONT、渋谷マークシティ、セルリアンタワーが開業した。

これまでの歩みについて説明する東急 執行役員 都市開発本部 渋谷開発事業部長 坂井洋一郎氏

2002年には、東横線の地下化および東京メトロ副都心線の相互直通運転が決定。これを契機に、100年に一度と言われる駅周辺の大規模再開発がスタートした。東横線が地下化されたのは2013年3月。

渋谷駅周辺における東急グループが携わる再開発は11プロジェクトで、延床面積は約120万m2におよぶ。

また、渋谷における文化的関心の12年の変化をSNS投稿データを用いて可視化した図で紹介した。2011年には、タワーレコードやライブハウス集積地では「音楽」が多いが、そのほかでは「食」への関心が高かった。Bunkamuraやパルコ周辺では「映画」や「アート」なども見られる。

これが2023年には、スクランブルスクエア、ヒカリエ、ストリーム、キャストなど開発によって生まれたスポットに文化的関心が広がっていると説明した。

渋谷スクランブルスクエアと歩行者ネットワーク

渋谷スクランブルスクエアは、東急、JR東日本、東京メトロの3社が共同で手掛ける渋谷駅一体型の再開発。すでに開業している地上47階・地下7階・高さ約230mの東棟、2031年度完成予定の地上10階・地下2階・高さ約61mの中央棟、地上13階・地下4階・高さ約76mの西棟で構成される。

渋谷スクランブルスクエアについて説明する東急 都市開発本部 渋谷開発事業部 開発推進グループ 統括部長 田邊秀治氏

スクランブルスクエアの開発では大型複合施設建設のほか、エリアの分断や複雑な動線といった課題解決に向けた歩行者動線も整備。2030年度には宮益坂方面とハチ公側を結ぶ歩行者デッキが概成する。

宮益坂交差点方面からの視点(提供:渋谷駅街区共同ビル事業者)
スクランブル交差点方面からの視点(提供:渋谷駅街区共同ビル事業者)
スクランブルスクエア東棟15階から撮影。画像下側に見えるのが工事中の歩行者デッキ。この下に銀座線の渋谷駅がある。画像右は宮益坂下交差点
同じ視点から見た、ハチ公方面の現在の状況
道路の頭上にあるのが銀座線渋谷駅で、その直上で歩行者デッキの工事が進められている
ヒカリエ1階付近からデッキを見上げる。スクランブルスクエアとヒカリエを結ぶ歩行者デッキ(左)に並ぶ形で、ハチ公までつながる歩行者デッキ(右)が整備されることとなる

商業フロアは完成済みの東棟とあわせて、1フロアあたりの売場面積が最大約6,000m2で、首都圏最大級の商業施設になるという。また、中央棟の10階屋上には、渋谷スクランブル交差点から新宿方面の街並みまで見渡せる、各国大使館などと連携したグローバルな「10階パビリオン(仮称)」を整備する。

中央棟・西棟完成後の2033年度には、中央棟4階に最先端技術を活用したコンテンツを体感できる「4階パビリオン(仮称)」、中央棟4階とハチ公広場をつなぐ歩行者ネットワーク向上のための縦軸移動空間「アーバン・コア」を整備。4階パビリオンは、JR山手線・埼京線のすぐ上に位置し、渋谷スクランブル交差点を至近で見渡せるロケーションとなる。

スクランブルスクエア各棟の位置関係は、JR線の上に設置される中央棟を中心に、東棟がヒカリエ側、西棟がフクラス側で、かつて東急百貨店東横店があった場所。

左から東棟、中央棟、西棟。さらに右端にある建物はフクラス
西棟はかつて東急百貨店東横店があった場所(19年8月撮影)
西棟エリアの工事の様子

そのほか、2034年度までに、「ハチ公広場」「東口地上広場」「中央棟4階広場(JR線路上空)(仮称)」「西口3階上空施設(仮称)」「中央棟10階広場(仮称)」の、計約20,000m2の5つの広場空間が誕生する。

模型のハチ公広場・スクランブル交差点側
ハチ公改札周辺工事の様子
模型の東口地上広場・明治通り側
東口側から見た工事の様子

東急百貨店本店跡地に新たな大型文化複合拠点

東急百貨店本店跡地で進められている「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」は、商業、ホテル、レジデンス、ミュージアム等で構成される複合施設。敷地面積約13,675m2、延床面積約119,000m2(ともにBunkamura含む)で、新築部分は地上34階・地下4階、高さ155.7mの規模となる。Bunkamuraは地上7階・地下2階。

渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト 外観イメージ(Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD/提供:東急)
渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト 近景(Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD/提供:東急)
東急百貨店本店(22年8月撮影)
渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクトの模型
フロア構成
渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクトについて説明する東急 都市開発本部 渋谷開発事業部 プロジェクト推進第一グループ 統括部長 江島隆広氏

同プロジェクトが進められている場所は、渋谷駅周辺と、閑静な高級住宅地である松濤の結節点に位置している。また、Bunkamuraをはじめ、周辺には、松濤美術館、戸栗美術館といった文化施設が集積している。

こういったことから、渋谷駅周辺とは違う表情を持つ「もう一つの渋谷」におけるランドマークと位置付けており、Bunkamuraとのさらなる融合を推進し、新たな大型文化複合拠点を目指す。

キャッチコピーは「Tokyo’s Urban Retreat」。身体的、精神的、知的に満たされ、包括的なウェルビーイングを体験できる空間を創造するとしている。

低層階の施設の中心にはアトリウムを設置。また、「Bunkamura ザ・ミュージアム」が入る7階、8階~10階のホテルエリアと接続され、いくつものステージが段状に重なる庭園「The Sanctuary」を整備する。

The Sanctuary(Image by Mir, Copyright Snøhetta and NIKKEN SEKKEI LTD/提供:東急)

ホテルは、スモールラグジュアリーホテルブランド「The House Collective」が日本初進出する。

宮益坂に商業、ホール&カンファレンスなどの複合施設

宮益坂地区再開発については坂井氏が説明。渋谷駅の東側、ヒカリエの北側に位置し、宮益坂をまたぐ形で開発が進められる。

開発エリアの現在の様子

敷地面積は約10,870m2、延床面積は約201,300m2。規模はA街区が地上33階・地下3階、B街区が地上7階・地下2階、C街区が地上2階・地下1階で、A街区の高さは180m。

A街区には商業やオフィスのほか、渋谷エリアに不足する大規模なホール・カンファレンスおよび国際水準の宿泊滞在施設を整備する。B街区は商業が中心。両街区はデッキで接続する。

またC街区には、開発エリア内にあり、室町時代からの歴史を持つ宮益御嶽神社を再整備し、神社を通して育まれてきた文化、コミュニティ、アイデンティティを次の時代へとつなぐことを目指す。

宮益御嶽神社

なお、東急として渋谷でこれら以外にも、詳細は明かせないものの3つの計画が進められているという。

渋谷駅周辺航空写真(提供:東急・東急不動産/24年5月撮影)