ニュース

シャープ、ウェアラブル参入 AIoTで家電進化

シャープは17日、2028年に向けた事業戦略説明会を開催し、自社ブランドを軸にグローバルで成長していく方針を説明した。家電などのスマートライフビジネスグループでは、AIoT関連事業を一元化し、データを活用したビジネスモデルなどを強化していく。

同社は24年度に堺ディスプレイプロダクト(SDP)のパネル生産を停止し、堺工場の主要資産の売却を完了。26年8月には液晶パネルの亀山第2工場を鴻海に譲渡するなど、デバイス事業を縮小し、シャープの自社ブランド事業に集中していく方針を示している。今回、家電などの「スマートライフ」とソリューション型ビジネスの「スマートワークプレイ」についての成長戦略を説明した。

AIで進化する家電

スマートライフ ビジネスユニットの2024年度売上高は6,400億円。白物家電とテレビ、ソーラーなどのエネルギーソリューションを展開している。

AIoT事業については、「家電」とAIサービスの連携を進める。白物家電、テレビ、ソーラー、携帯電話の「すべて」を持っているというシャープの強みと、相互接続する「COCOROプラットフォーム」を構築しており、他社と連携を進めながらスマートホームを実現できる点が特徴。

その中でも家電のAI対応を進めていく。25年度は多くの家電製品でAIを搭載し、27年度には家電のハードウェアだけでなく、AIサービスでも収益を上げていく計画。すでに家電の声を好みの音色に変えるなどのサービスは実施しているが、買い替えたら設定がそのまま引き継がれたり、機器をまたいで設定や環境を共有できるなどサービス連携による付加価値向上を図る。

AI活用の具体例として、ヘルシオではレシピや調理法の提案を行なっている。また、将来のイメージとして、洗濯機に洗濯物のドロ汚れの洗い方を声で相談すると自動的に最適な洗濯メニューを選べる、テレビを見ながらサッカーで苦手なシュートについて尋ねると、大画面でシュートのコツを教える、といった事例を動画で紹介。「悩み事」に対して適切な答えを伝える家電を目指すという。

商品においては、日本以外の「各国で他社がまねする商品」の創造に取り組む。海外展開も強化しており、ASEANでは、地域に根ざした製品展開を図るほか、若年層向けのプロモーション強化などを予定。特に「ローカルフィット」をシャープの強みとし、例えば砂漠地域では砂塵に強い空気清浄機など、(頭や体を覆う)ヒジャブのニーズが高い地域においてはヒジャブに適した洗濯機などを展開する。

また、米国においても強みを持つ「ドロワーレンジ」(引き出し式の電子レンジ)をきっかけに販売強化を行ない、食洗機や冷蔵庫などの拡大を目指す。

テレビは、国内トップブランドとして、フルラインナップを展開する。海外においても大画面化トレンドにあわせた事業強化を図り、付加価値の高い製品に軸足を置く。

AIは「現場」で強化 ウェアラブルに参入

複合機や業務用ディスプレイ、PC、携帯電話などの「スマートワークプレイ」の24年度売上規模は8,264億円。

複合機やPC、スマートフォンなどの市場成熟が進む中、AIで進化したハードウェアを活用した「スマートプロダクト」を拡大。AI/DXサービス側に事業構造をシフトし、現場に近いAI・DX推進を担うプロダクト展開を強化していく。

パソコンでは、Windows 10サポート終了特需の反動減に対し、ソリューション事業の強化で対応。モバイルでは、BtoC、BtoBともにスマートフォンの国内競争力を維持するほか、“業界初”の機能をもつ独創的なウェアラブル製品も投入しLTV(顧客生涯価値)の拡大を目指すとした。

さらに衛星通信事業を本格的に立ち上げ。世界最小レベルという低軌道衛星(LEO)向けの通信端末を強みとし、衛星通信に参入し、「グローバルニッチトップ」を狙う。

日本の通信エリアカバー率は99%以上とされているが、人口ベースでのもの。携帯電話が届かない場所に高速インターネットを提供することで、「建機や農機でのAI/DX化」を進めるほか、災害時における非常用通信(BCP)ソリューションとしても期待されるという。

スマートワークプレイ事業では、スマートプロダクト比率を27年度に30%、30年度に約50%まで拡大。売上高は30年度1兆円超を目指す。

また、開発中のEVについては、鴻海の「Model A」ベースに新たなプロトタイプを発表予定としている。